ご挨拶

倉 敏郎理事長

第6代PEG・在宅医療学会理事長を拝命して

~継承を目指して~

くら内科内視鏡クリニック 院長

倉 敏郎

皆様、この度PEG・在宅医療学会理事長に就任いたしました。ご挨拶申し上げます。伝統ある本学会のために力を尽くしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

私は第4回のHEQ研究会(滋賀 馬場忠雄教授当番世話人)から参加しており、その後毎回学術集会に出席しております。その間札幌で開催された第9回HEQ研究会(加藤紘一教授当番世話人)の事務局、第22回PEG・在宅医療学会学術集会の当番会長を務めさせていただきました。西口理事長の後任として本職に就任しましたのでよろしくお願いいたします。

さて、これまでのPEGにまつわる事情を鑑みると、当初の「普及と発展の右肩上がりの時代」を経て、2010年頃からのいわゆる「PEGバッシング」により、本来その良い適応である患者さんにもPEGが行われなくなり、様々な問題点が生じるようになりました。

経鼻胃管での栄養管理が多くみられるようになり、その苦痛から事故抜去が頻回にされ、拘束をしながら管理されるというケースが多いと聞いております。これらについては厚労省からも「拘束最小化」を求められており、拘束する必要性が少ないPEGがこれから第一選択となる本来の姿に戻ることと思います。また、療養病床における保険点数によって経腸栄養よりもCVポートなどを用いた静脈栄養が選択されることが多くの症例で見られました。ご存知のように長期の静脈栄養はBacterial Translocationのように易感染状態を引き起こしてしまいます。これに対しても保険点数の見直しがされ、本来の経腸栄養に戻りつつあります。

我々は、このようなことを認識し、経腸栄養の利点、PEGの利点を広めていかなければなりません。

<エビデンスの構築>

では実際にPEGの利点と言われていることが本当に正しいのか、これについて議論しエビデンスを積み重ねて発信していかなければなりません。比較対照試験が難しくエビデンスを築きにくい分野ですが、いくつかの成績が示されています。

まず、NPO法人が行なったPEG施行後の患者の予後に関する大規模調査です。この研究調査では、欧米と違い本邦での予後が優れていること、また早期に介入することによりADL向上が望めること、認知症の有無でその後に大きな違いが無いことが示されております。次に、PEGによる経腸栄養とTPNの比較の後方視的論文が発表されました。この論文ではPEGの優位性が示されており、我々が日常感じていたことを実証してくれた優れた論文です。また、栄養指標が良くない(O-PNI38以下)場合ではPEG後の経過が思わしくなく、適応について慎重に判断すべきことや、造設する部位によって合併症の種類や頻度が異なり注意を要することが報告されております。

これらの貴重な論文、発表のような事を積み重ねて世の中に広めてゆく必要があると思われます。

<他団体との連携>

これからの経腸栄養管理、在宅医療分野において広く患者さん、ご家族のために活動を行うためには、本学会単独では不十分です。そこで各種学会(栄養関係、在宅関係、緩和医療関係など)や、関連するNPO法人とも連携がますます必要になってきます。特にPEGは内視鏡を用いる手技です。内視鏡関連学会との連携が重要と思いますので進めていきたいと思います。

<我々がなすべきこと>

これは、当たり前のことですが、トラブルを避けるための造設法の検討、その術前術後の管理方法、合併症を防ぐための工夫と起きてしまった時の対応策、栄養剤投与に関する各種注意事項(栄養剤の選択、投与量、投与時間、逆流への対処)等を議論し高めあうことです。そして、何より大切なのは、それを発信し啓発活動を続けること、また、この「レベルの高い造設と管理法」を次世代へ伝承することです。

以上のことを実行するためには、広く皆さんからご意見を頂戴し、それを踏まえた上で患者さんのためにどのような方法が最も良いのかを探っていかなければなりません。どうぞよろしくお願いいたします。